タイムマネジメントで「仕事のさばき方」のスキルをアップ!

「働き方改革」って何だ?!

現在、あらゆるところに「働き方改革」という言葉が氾濫している。政府には「働き方改革担当大臣」が設置され、企業には「働き方改革委員会」が立ち上がり、「働き方改革」の名を冠したセミナーやITシステムの広告が溢れ返っている。

では、私たち労働組合にとっては「働き方改革」って何だろうか?

今回は、現場の働き方を良くすることを目指した労働組合による「働き方改革」の試みを紹介する。それは、一部の企業経営者が掲げる「2020年度までに何が何でも残業ゼロ」のことでもなければ、一部の企業が宣伝する「リモートワーク(およびそのためのWeb会議システム)の導入」のことでもない。

一人ひとりが、仕事や私生活における「一番やりたいこと」や「最もやるべきこと」をやり遂げることができるための「考え方」と「技術」を身に付けることを目指した取り組みである。

仕事の「やり方」にメスを入れる

その会社では、ここ1年の間に矢継ぎ早に「働き方改革」のための社内プロジェクトが立ち上がった。まず、「わが社では働き方改革に全力で取り組む」旨の社長メッセージが出され、次いで社長を座長、人事部長を事務局長とする「働き方改革推進委員会」なる会議体が月に1回設置された。

各事業部長や組合の委員長も名を連ねた第1回委員会では、「働き方改革のための実践アイデア」を持ち寄ることが必須の宿題とされ、第2回以降、その「実践アイデア」の効果検証を繰り返すことになった。20時の強制消灯や早朝出勤の奨励、会議時間の短縮、残業申請の徹底……など、具体的なアイデアがたくさん寄せられた。

「考えている」暇はない。「具体的な行動」をとらなければ成果は上がらない。
とにかく「今までの意識」を変えて、「早く帰る」ことを全社員が目指している状況を作らなければ、社会の流れから取り残されてしまう。
そんな焦りも手伝って、各事業部長の評価項目には「所定外労働時間の削減率」が追加され、どの部門でも血眼になって「残業削減」に向けた上司からの発破がかけられるようになった。

しかし、現場の組合役員からはこんな声が上がるようになった。

「働き方を変えないといけないことは理解している。今までよりも“やらなければという意識”は出てきたとも思う。でも……上司や取引先からの仕事の与えられ方は何も変わっていないし、私たち自身も“どう変えればよいのか”がわからないまま、“とにかく何かをやれ”っていう風潮だ。結局、取り組みの中身も責任も、現場に押し付けられているようにしか思えない」

会社からのトップダウンは、働き方改革の「やる気」に火を点けた。

しかしそれは、働き方改革の「やり方」への熟慮がないまま、「労働時間」は減らして「仕事の成果(質や量)」は増やせという矛盾を現場に突きつけているだけではないか。

このままでは現場に不満が蓄積するだけでなく、「見せかけの労働時間短縮」のためのサービス残業が横行しかねない。そう危機感を持った執行部は、「やる気を出させること」に頼った働き方改革から、一人ひとりの「仕事のやり方」を地道に変えることを目指した人材育成活動へと取り組みの重点をシフトすることにした。

セルフマネジメントの積み重ねが、組織の力を強くする

この組合が導入したのは、一人ひとりの「仕事のさばき方」のスキルアップを目的としたトレーニングと診断を軸にしたプログラムだ。

まずは組合執行部を対象として、「自分の仕事をどれだけコントロールできているか」のレベルを測定するアセスメントを行った。半数以上の役員が、「他人に振り回され、時間に追われて、その日暮らしの仕事をしている」状況にあるとの診断が下された。「今、目の前にある仕事さえ満足に処理することができていない=質の低下や仕事の遅延が常態化している」状態だった。そもそも「今、自分が抱えている仕事は何なのか」が不明確で、「優先順位も不明瞭で、手あたり次第、目の前にある仕事から着手している」のが実情であることも報告された。

ここに「20時強制消灯」などを導入すれば、ますます「持ち帰り仕事」や「サービス残業」が増えるだけでなく、「中身のない仕事」や「期限に間に合わない仕事」がますます増えるだけだ。会社から発信される「矢継ぎ早の取り組み」を横目に、まず執行部を対象に全5回分の育成メニューが設計され、一人ひとりの「仕事のさばき方」のスキルアップトレーニングが行われた。

どんな仕事にも、「自分でコントロールできる側面(事前にわかる仕事や、仕事の開始)」と「他人による関与が大きい側面(突発的な仕事や、仕事の期限)」の2つがセットで存在している。その「自分でコントロールできる側面」をコントロールできていないビジネスパーソンがとても多い。

そんな状態のまま、会議・商談や新規プロジェクトなどの「他人の関与が大きい=自分ではコントロールできない」仕事を増やしてしまったら、ますます仕事に振り回されて生産性が落ちるだけである。

そんな問題提起から始まったトレーニングコースでは、「一人ひとりが自律的に仕事を管理する技術」の理解と実践を通じて「時間を味方につける」ための考え方と技術が伝授されていった。

その後、全組合員にこの診断が実施され、執行部役員が所属する5つの部署がプロジェクト職場に指定された。この取り組みは会社側も注目するところとなり、それらの職場では管理職も含めて月に一回講師の指導が行われるとともに、日常的に起こる業務遂行上の課題の解決策が話し合われ、部署全員での試行錯誤が今日も続けられている。

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「働き方改革」を実現するということは、単に「労働時間を減らす」ことではい。ノー残業デーやプレミアムフライデーを導入して「労働時間を減った」としても、その分仕事の「質(クオリティや単価)」や「量(件数や取引数)」が下がってしまったのでは意味がないからだ。仕事の「質と量=中身」を変えずに、「労働時間を減らす」ことを一人ひとりができるようにならなければ、私たちの雇用や賃金は守ることができない。

「仕事の質と量を変えずに、労働時間を減らす」ことができるようになって初めて、「同じ時間で=残業をせずに、仕事の量を増やす」ことができるようになる。そして、「同じ時間で、たくさんの量をこなせる」ようになる=仕事の経験がたくさん積める状況ができて初めて、「仕事の質の向上=品質や付加価値、顧客満足の向上」、すなわち「賃金を上げる」ための仕事への道が開ける。

「働き方改革」が、単に企業の残業代削減や政府の公約実現のためだけでなく、「働く私たち一人ひとりの人生を豊かにする」ためであるなら、制度やシステムの導入ではなく、「私たち一人ひとりの生き方・働き方が変わること」がゴールでなければならない。

仕事に求められるスピードも量も増え続けている昨今、私たちは自分を見失いやすくなっている。まずは「私がしたいこと・すべき仕事は何か」を明確にし、「その中で、最も大事なのはどれなのか」を特定すること。そして、その「大事な仕事」の質を上げるために絶えず仕事の進め方の腕を磨くこと。それこそが、働き方を変えるための第一歩だ。

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